世界的な一般消費財メーカであるプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)【PG】を分析してみたいと思います。
【PG】プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の概要
(出典:Procter & Gamble Company )
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)【PG】は米国の消費財メーカーの大手であり、衣料用・台所用洗剤、消臭剤、ベビー用品、ヘアケア用品、シェーバーを世界中で販売しています。
主なブランドは衣料用洗剤「アリエール」、「ボールド」、台所用洗剤「JOY ジョイ」、エアケア「ファブリーズ」、ベビー用品「パンパース」、ヘアケア「パンテーン」、「ヴィダルサスーン」、シェーバー「ジレット」、「ブラウン」です。
同社は連続増配年数60年以上の配当王でもあり、安定した配当支払いと連続増配を望む投資家に選好されています。
企業情報
会社英名 | Procter & Gamble Company (The) |
本社所在地 | アメリカ合衆国 オハイオ |
設立年月日 | 1837年 |
従業員数 | 92,000人 |
上場市場 | NYSE(ニューヨーク証券取引所) |
業種分類 | 一般消費財(Consumer Products) |
時価総額 | 時価総額 208.68B(同業種内1位) |
同業他社
(出典:「finviz」)
「Personal Products」部門で時価総額で比べると、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)【PG】が1位、ユニリーバは2位となりますが、UNとULを合わせるとユニリーバが時価総額は1位となります。
スクリーナは「finviz」というサイトで確認しました。スクリーナ方法については別途記事にしたいと思います。
ビジネスモデル
(出典 : Procter & Gamble Company)
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)【PG】は時価総額25兆円、売上高7兆円の超巨大企業であり、日用品ブランド製品を多数保有していています。
地域別売上高比率は米国(U.S.)が4割で米国外(Outside U.S.)が5割で世界中でビジネス展開しています。
米国 :44%
ヨーロッパ :24%
アジア : 9%
中国 : 9%
他 :14%
製品セグメントは5つあります。
ベビー、ファミリーケア:27%
ビューティーケア :19%
ホームケア :32%
ヘルスケア :12%
グルーミング(シェーバー):10%
■ベビーケア、ファミリーケア部門:
ベビーケアは紙おむつ「パンパース」が有名です。ファミリーケアは「チャーミン」(トイレットペーパー)といった製品です。
■ビューティーケア部門:
ヘアケアはシャンプーやトリートメントで有名な「パンテーン」や「ヴィダルサスーン」、化粧品の「SK-II」などです。スーパープレミアムSK-IIブランドは2017年度は2桁成長を達成し好調です。
■ホームケア部分:
洗濯用洗剤「アリエール」「ボールド」、台所用洗剤「ジョイ」、消臭材「ファブリーズ」などです。P&Gの香りビーズはおよそ市場における80%の市場シェアを確立し、2017年度にはほぼ20%の成長を達成しています。
■ヘルスケア部門:
オーラルケア「クレスト」、サプリメントなど。
■グルーミング部門:
カミソリ・替刃の「ジレット」など。
日用品は普段から使用しているものを繰り返し消費される傾向があり、不況下においても突然売れなくなるということがありません。
しかし昨今、米国での販売量は減少傾向にあります。
これはAmazonに代表されるネットショッピングモール、eコマースを活用した新興企業によるリーズナブルな定期購入などの消費者行動の変化によって、ネットで気軽に製品を購入することができるようになりP&Gの市場シェアが縮小したためです。
消費者は「より便利に」、「よりリーズナブルな製品」を求めるようになっており、こうした新興企業がP&Gの驚異となっています。
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)【PG】は新興ブランドによる製品のコモディティ化の防止、市場シェアを維持するためにブランドの合理化計画を打ち立てています。
P&Gは105あるブランドを売却、廃止または連結し、10のカテゴリーに分類し、カテゴリーに合う企業や技術を買収することで再ブランディング化をはかることでブランドの選択と集中を行っています。
各国市場の地域性、多様性を新たな価値観として検証し、新しいアイデアやイノベーションを生み出す世界最大のマーケティング・カンパニーとしての強みを最大限に生かし、徹底した顧客指向による製品開発で勝負する戦略です。
財務表分析
売上高・営業利益率・純利益・ROE
年次報告(annual report)で年間の経営成績を確認してみます。
(出典 : The Procter & Gamble Company 2018年マニュアルレポート)
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)【PG】の売上は12年をピークに減少傾向にあります。直近3年は横ばいです。
営業利益率は10年間、平均19%前後の高い水準を維持しています。
同業者のユニリーバ(UL)の16%前後と比べても非常に高い営業利益率となっています。
ROE(純利益に占める自己資本の割合)は2017年に主力商品の売上改善と化粧品ブランドの売却に伴う特別利益により改善しています。
2018年は10年間の平均値である19%に落ち着いています。
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)【PG】は総じて生活必需品セクターらしい安定した経営成績を残していると言えます。
本業で得た収益を表す。売上高の大きさは会社の事業規模を示します。
売上高からコスト(人件費、広告宣伝費等)を差し引いたもので、本業で稼いだ利益を表します。
経常利益に対して特別利益や特別損失を加算/減算し、そこからさらに税金を差し引いたもの。最終的に会社に残るお金を表します。
売上高と営業利益との割合で(営業利益÷売上高×100)で求めます。
ROE = 純利益 / 自己資本(Equity)で求めます。会社の収益性を表します。
キャッシュフロー(CF)
フリーキャッシュフロー、売上高FCFは10年間横ばいで安定維持しています。資本支出も安定しています。
潤沢なキャッシュフローにより株主還元が期待できます。
本業の収入と支出で得たキャッシュ量を示す数値で、合計額がプラスであれば、本業が順調であることを示します。
★営業CFがプラス > キャッシュ増加 > 財務CFがUP、投資CFがUP =>業績がUPする可能性
★営業CFがマイナス > 借入金増加 > 財務CFがDOWN、投資CFがDOWN=>業績がDOWNする可能性
営業キャッシュフロー+投資キャッシュフローで求めます。
★FCFがプラス > 借入金減少 > 経営良好
★FCFがマイナス > 借入金増加 > 経営悪化
「有形固定資産の購入」の数値を「営業CF」から差し引いた値です。
FCF÷売上高x100で求めます。
バランスシート(BS)
自己資本比率は10年間で漸減傾向にあり、約10%低下していますが、常に40%以上をキープしており、非常に良い水準です。
(一般に自己資本比率の平均は赤字企業で-4%、黒字企業で25%、優良企業(黒字企業中上位15%)で53%といわれています)
・資産合計(TOTAL ASSETS)
・流動資産 (TOTAL CURRENT ASSETS)
・固定資産 (資産合計(TOTAL ASSETS) – 流動資産(TOTAL CURRENT ASSETS))
・負債合計(TOTAL LIABILITIES AND EQUITY) ※資産合計と同じ
・流動負債 (TOTAL CURRENT LIABILITIES)
・固定負債(負債合計 – 流動負債 – 純資産)
・純資産(=株主資本) (TOTAL SHAREHOLDERS’ EQUITY – Noncontrolling interest)
資本投下により会社の資産が生じるため、資産の合計値と負債・純資産の合計値は一致します。
株主還元指標(1株利益(EPS)+1株配当+増配率+配当性向)
1株利益(EPS)は10年間減少傾向にあります。
2017年に化粧品ブランドの売却に伴う特別利益により一時的に増加していますが、通常は4%前後で推移しています。
配当は60年連続増配で右肩上がりで平均6.8%前後の増配率を維持しています。
ただし、直近5年では平均4%と増配ペースが落ち込んでおり、ここ10年で配当は約1.7倍に増加しています。
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)【PG】は連続増配の配当王であり、安定した配当支払いと増配が魅力です。
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)【PG】からの配当金受領報告はこちらヘ。
配当性向は年々増加傾向にあり、2018年は76%まで増加しており、注意が必要ですが、同じ生活必需品セクターである、コカ・コーラ(KO)、ペプシコ(PEP)に比べるとまだまだ増配余力あります。
1株当たり利益(円) = 当期純利益 ÷ 発行済株式総数。
1株に対して利益(当期純利益)がいくらあるのかを表します。
1株あたりの配当支払い額($)を表します。
配当性向(%)=1株当たりの配当額÷1株当たりの当期純利益×100で計算します。配当性向は、その期の純利益から、いくら支払っているかをパーセンテージで表したものです。
(一株配当÷前年一株配当)-1 x 100で計算します。
チャート分析
10年チャート
5年チャート
ここ10年チャートでは上昇と下落を繰り返しながら、緩やかな右肩上がりのチャートとなっていますが、直近の5年チャートでは横ばいです。
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)【PG】のような強力なブランド力をもつ成熟した巨大企業は景気に左右されず比較的価格変動が少ない安定した銘柄ですが、成長性に乏しいのが難点です。
まとめ
2 事業ポートフォリオの再ブランド化により、売上げは減少するも営業利益率は維持
3 60年連続増配で6.8%前後の増配率を維持。(10年で配当は1.7倍)
4 コカ・コーラ(KO)、ペプシコ(PEP)に比べるとまだまだ増配余力があり。(配当性向76%)
5 過去5年チャートでは株価成長は期待できず、横ばい傾向にある
管理人はしばらくは保有を継続しますが、積極的に買い増しはしないと思います。
オススメ度 ・・・★★☆☆☆ 星2つ